糖尿病の治療について
糖尿病は、初めて聞くと「自分には関係ないかも…」と思われるかもしれません。でも実は、身近な生活習慣の積み重ねで起こりやすく、自覚症状が出にくいため気づかないまま進行してしまうこともあります。放っておくと目や腎臓、心臓などに影響を及ぼす合併症を招きますが、早めに知って適切に対処すれば、今まで通り元気に過ごすことができます。
ここでは「糖尿病ってどんな病気?」「なぜ治療が必要?」「どんな治療がある?」を、わかりやすく解説します。
糖尿病とはどんな病気ですか?
インスリンというホルモンの働きが弱まることで、血液中にブドウ糖(血糖)がたまってしまう病気です。インスリンは膵臓(すいぞう)でつくられ、血糖を全身の細胞に取り込む“鍵”の役割をしています。その鍵がうまく働かない、または鍵そのものが足りない状態が続くと、血糖が高いままになってしまいます。
なぜ糖尿病になるのですか?
糖尿病が起こる背景には、大きく二つの仕組みがあります。
- インスリン分泌が足りない
自己免疫などで膵臓のβ(ベータ)細胞が減り、インスリンが十分に出なくなるタイプ(1型糖尿病)。 - インスリンの効きが悪くなる
肥満や運動不足、年齢などで筋肉や肝臓、脂肪組織がインスリンに反応しにくくなるタイプ(2型糖尿病)。日本では糖尿病の多くがこのタイプです。
そのほか、膵臓の病気や薬剤の影響で起きる場合や、妊娠中に初めて見つかる「妊娠糖尿病」もあります。
糖尿病はなぜ治療をする必要があるのですか?
血糖が高いだけでは特に自覚症状はありません。初期には糖尿病であることは自覚しにくい(自覚できない)ことが特徴です。しかし、放置すると…
- 目や腎臓、神経の小さな血管が傷つき(網膜症・腎症・神経障害)、視力低下やしびれ・痛みを招く
- 心臓や脳、足の大きな血管が硬くなって(動脈硬化)、心筋梗塞や脳卒中、末梢動脈疾患のリスクが高まる
こうした合併症は、日常生活の質を大きく損ない、最悪の場合、命にかかわることもあります。だからこそ、早めの治療・検査がとても大切です。
糖尿病はどうやって診断するのですか?
日本糖尿病学会のガイドラインでは、以下の基準をもとに糖尿病を診断します。原則として、血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の平均血糖)をあわせて確認します。
- 空腹時血糖値が126 mg/dL以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値が200 mg/dL以上
- 随時血糖値が200 mg/dL以上
- HbA1cが6.5%以上
血糖値が糖尿病型を示し、かつHbA1cも6.5%以上であれば、糖尿病と診断します。
また、血糖値が糖尿病型を示し、口渇、多飲、多尿、体重減少などの典型的な症状がある場合や、糖尿病網膜症が確認されている場合には、1回の検査で診断できることもあります。
1回の検査だけでは確定できない場合は、別の日に再検査して確認します。なお、HbA1cだけを繰り返し測って診断を確定することはできません。
また、血糖が正常と糖尿病の中間にある、いわゆる境界型は、将来の糖尿病リスクが上がるだけでなく、動脈硬化のリスクも高くなる状態です。食事や運動など生活習慣の見直しが大切になります。
糖尿病はどう治療するのですか?
完全に治すことはまだ難しいですが、しっかりコントロールすれば合併症を防ぎ、元気に過ごせます。治療は主に二つの柱です。
- 生活習慣の見直し
食事:極端な方法に偏らず、続けやすい食事内容を基本に、必要に応じて適正な摂取量を調整する
運動:毎日少しずつでも体を動かし、内臓脂肪を減らし、インスリンの効きを良くする - お薬の力を借りる
飲み薬や注射薬を、血糖値だけでなく、体重、低血糖の起こりやすさ、心臓や腎臓の状態もふまえて選びます
必要に応じて、インスリン注射、GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬などを用います
これらを組み合わせて、一人ひとりの生活スタイルに合ったプランを立てます。血糖値の目標(HbA1c)は個人によって異なり、年齢や基礎疾患、低血糖の起こりやすさなどによって変わります。一般的には「7.0%未満」が目安ですが、無理なく安全に続けられる範囲で調整します。
また、高血圧や脂質異常症などの他の生活習慣病の治療や、喫煙している場合には禁煙することなども大切です。
相談はお気軽に
- 健康診断で血糖やHbA1cの異常を指摘された
- のどが渇きやすい、多飲多尿を感じる
- 体重減少が気になる
- 家族に糖尿病の方がいる
こんなときは、早めの受診がおすすめです。いつでもご相談ください。
参考文献
日本糖尿病学会 編『糖尿病診療ガイドライン2024』
厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会『糖尿病標準診療マニュアル2025』
