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花粉症の注射?

公開日:2025-06-05 最終更新日:2026-01-04

花粉症の相談室(花粉症のFAQ)

「花粉症の注射はやっていますか?」という質問が増えています。

アレルギー専門医の立場からすると、現在花粉症の治療として使われる注射と言えば「ゾレア®」です。これは、重症の花粉症患者さんのための新しい薬です。

実際にはほとんどの花粉症の患者さんは、注射による治療を必要としません。

昔に比べて効果が高くて副作用も少ない飲み薬が使用できることと、追加で使用する点鼻薬・点眼薬の効果もとても高いためです。また、舌下免疫療法(シダキュア®)によってスギ花粉に対するアレルギーそのものを改善する治療も行うことができます。

そういった通常の治療をしっかりしても、十分な効果が得られない場合があります。
一部の重症の患者さんであったり、通常であれば問題ない症状を一時的にさらに良くしたい(受験生や結婚式などのイベント時など)場合に、追加の治療としてゾレアはとても良い治療法です。

しかし、インターネットで調べると、ゾレア以外の注射を提供しているクリニックも見つかります。ここでは、「花粉症の注射」にはどのような種類があり、なぜ当院ではゾレアのみを扱っているのか、専門医の視点からお話しします。

1.ゾレア®(オマリズマブ)

ゾレアは、重症の花粉症に対する治療法として2020年から保険適用となった比較的新しい薬剤です。
と言っても、重症の気管支喘息にはすでに2009年から使用されており、呼吸器内科の医師にとってはすでに馴染み深い使い慣れた薬でした。

「鼻アレルギーガイドライン」では、重症の季節性アレルギー性鼻炎の患者さんの治療として、ゾレアの使用が「強く推奨」されています。

ゾレアは、アレルギー反応を引き起こす抗体(IgE)に直接結合することによりその働きを邪魔して、アレルギー反応を根本から抑制することで効果を発揮します。

ゾレア治療の最大の利点は、抗アレルギー薬の内服や点鼻薬などでは抑えきれないひどい花粉症の症状を改善してくれることです。
しかし、治療を受けるには、アレルギー反応を引き起こす特定の抗体(IgE)のレベルが一定の範囲内であること、そして、その他の治療方法で効果が不十分であることが条件となります。

また、健康保険の治療ではありますが、通常の治療に比べると高価であることにも注意が必要です。しかし、花粉症の症状がひどい期間は限られていることから、多くの方が1シーズンに1回だけの注射で十分な効果を得られています。

その効果や安全性とのバランスを考えると、通常の治療だけでは花粉症の症状を十分に軽減できない場合には、まず最初に検討すべき治療です。

当院でも治療の選択肢として、重症の患者さんなどにお勧めしています。

2.ステロイドの筋肉注射

ステロイドには強力な抗炎症効果があり、数多くの病気の治療に使用されている大変有用な薬です。「ステロイド」という名前の薬があるわけではなく、いくつもある同じ種類の薬をまとめた言葉です。抗アレルギー薬にもいろいろと種類があるのと同じです。

「一発で効く花粉症の注射」として一部の方に広く知れ渡っているのは、このステロイドの注射(筋肉注射)かも知れません。

花粉症にステロイドの注射を行うと、確かに高い効果が期待できます。

しかし、ステロイドは副作用も多く使用に注意が必要です。ステロイドを使用する必要がある病気の治療を行っている、使い慣れていればいるほど(呼吸器内科や膠原病リウマチ内科の医師)、そのステロイドのリスクを良く知っていると言って良いでしょう。

アレルギー専門医や学会でステロイド注射の使用をお勧めしないのは、得られる効果と副作用のリスクのバランスが悪い、という理由です。

ステロイドの副作用は全身のあらゆる臓器に起こる可能性がありますが、使用するステロイドの種類や量、期間によっても違いがあります。筋肉注射という投与方法にも大きな問題があります。
飲み薬や点滴による投与であれば、1回の治療でステロイドが長時間体内にとどまることはありません(これもステロイドの種類によって違いがあります)。しかし、花粉症の治療で行われている「筋肉注射」は、じわじわと吸収されて体に回るため、比較的長い期間に渡って薬の作用が持続するのです。このことは「長く効果がある」という良い点がありますが、逆に副作用をもたらす可能性が高くなる、副作用が出てしまっても薬の作用が続いてしまう、という非常に大きな問題となります。

ステロイドの飲み薬は短い期間だけ使用されることもないわけではありませんが、やはり使い慣れた医師によって、そのリスクが充分に説明された上で投与されるべきです。
もしステロイドの使用が数日ではなく長期になることが予想される場合には、最初から「ゾレア」の使用をお勧めすることになります。

日本アレルギー学会や「鼻アレルギー診療ガイドライン」では、花粉症に対してのステロイド注射の一般的な使用は推奨していません。

ステロイドの注射を考える前に、まずはそれ以外の治療が十分に行われているか、リスクを上回るだけのメリットがあるか、しっかりと確認しましょう。

3.ノイロトロピン®

ノイロトロピンは、ワクシニアウイルスというウイルスを接種したウサギの炎症を起こした皮膚組織から抽出し精製された薬剤です。

50年以上前に発売が開始された歴史ある薬剤で、主に腰痛や神経痛などに使用されておりましたが、アレルギー性鼻炎にも保険適用あります。

効果を示す大規模な臨床試験はなく、アレルギー性鼻炎のガイドラインでは、治療薬の紹介の中に「生物抽出製剤」として登場はしているものの、推奨される治療としては扱われていません。

効果が高く副作用が少ない最近の抗アレルギー薬や点鼻薬などがない時代には一定の有用性がありましたが、現在の役割は限定的であると言えます。保険適用であり安価のため、気軽に行っているクリニックも多いようです。

4.ヒスタグロビン®

ヒスタグロビンは、免疫グロブリンという献血によって得られる人の血液から精製・濃縮されるタンパク質に、ヒスタミンというアレルギー症状を起こす化学物質を加えた薬剤です。

喘息などのアレルギー疾患の治療薬として開発され、60年以上前にフランスで発売が開始され、日本でも1967年に発売されました。

免疫グロブリンはいくつかの自己免疫疾患の治療薬や重症感染症に使用されます。血液製剤(献血の血液から作られる薬剤)であることから、慎重に使用することが求められます。 なぜ効果があるのかがはっきり分かっておらず、効果が出るまである程度の時間がかかること、何回投与すれば効果がでるのかも個人差が大きいため使用してみないとわかりません。

ノイロトロピンと同じく効果を示す臨床試験は規模が小さく、ガイドラインで触れられてはいるものの、生物由来製剤であることに注意が必要であるとの記載があり、治療として推奨はされていません。 良い抗アレルギー薬や点鼻薬がある現在では有用性は限定的と言えます。
保険適用の治療となっていますが、血液製剤であるため、輸血を受ける場合と同じで投与にあたって説明を受け、そのリスクを理解した上で同意する(同意書に署名をする)必要があります。

5.星状神経節ブロック

花粉症に対する注射の治療としてもう一つ、最近SNSでも見聞きするようになったのが星状神経節ブロックによる治療です。

「神経ブロック」とは神経やその周囲に局所麻酔薬などを投与することによって、その神経が関与する場所の痛みを一時的に緩和する治療法です。

星状神経節ブロックは、下位頚椎横突起前面(首の骨のうち下の方にあるものの左右に飛び出ている部分の前面)に局所麻酔を行うことで、星状神経節や周囲の交感神経の働きを調節(遮断)して、主に頭や首・顔面・腕の痛みをやわらげることができる神経ブロックです。

神経ブロック自体は、大きな病院のペインクリニック科や専門のペインクリニックで行われる特殊な治療で、専門的な技術が必要です。

痛みを軽減させるという本来の目的で星状神経節ブロックを行った際に、花粉症症状も軽減したという報告が集まり、一部の医療機関で花粉症の治療として行われるようになりました。

ただし、花粉症治療としての効果や合併症を検証した大規模な臨床試験などが存在しないため、保険診療の対象にはなっておらず、自由診療となっています。保険診療であれば1回の治療で3割負担であれば自己負担は1000円程度(その他診察料や薬剤料がかかります)ですが、自由診療の場合には医療機関によって価格が異なります。インターネットの情報によると価格は1回あたり5000円程度から数万円まで幅が広いようです。

注射は首の前面から行い、近年では安全のため超音波(エコー)ガイド下に位置を確認しながら行うことが一般的です。「ペインクリニック治療指針」によると、注射による出血や血腫による気道閉塞や、局所麻酔薬の硬膜外腔・くも膜下注入による呼吸・循環の抑制などの合併症に対しての緊急の対処が可能な体制で行うことが必要であり、救急蘇生ができる専門医が行うべき治療であると記載されています。

SNSでは劇的な効果を報告する投稿などがありますが、そこまでの効果はなかったという投稿もあり、治療効果についてはさらなる報告が必要でしょう。

「治療指針」によると「花粉症の急性期には連日、左右交互に片側10回ずつ行う」という記載があるように複数回の治療が必要のことも多く、保険診療で行われる治療が十分に行われた上で検討される選択肢という立ち位置であると考えられます

花粉症の相談室(花粉症のFAQ)

まとめ

「花粉症の注射による治療」について解説しました。

アレルギー専門医の立場から、なぜ「ゾレア」以外の注射を当院では行っていないのか、ご理解いただけたと思います。

まずは一般的な治療である、抗アレルギー薬、点鼻薬・点眼薬と、舌下免疫療法を行うことが重要です。「ゾレア」についてもお勧めですので、いつでもご相談ください。

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