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COPD(肺気腫)とはどんな病気か — 初期症状・検査・治療

執筆:斎藤史武 公開日:2025-06-05 最終更新日:2026-09-20

坂道や階段で息が切れるようになった、咳と痰が何年も続いている。そう感じていても、長く吸ってきた方ほど「タバコを吸っているのだから当たり前」「歳のせい」と考えて、受診まで何年もかかることがあります。実際、COPDは日本で最も見つかっていない病気のひとつです。

このページでは、なみきばしクリニックの内科担当医(総合内科専門医・呼吸器専門医・アレルギー専門医)が、COPD(肺気腫)とはどんな病気か、初期症状の気づき方、診断に必要な検査、治療と今後の見通しをご説明します。診断に必要な検査は当院で受けられます。診察のご希望はWeb予約からどうぞ。

COPD(肺気腫)とはどんな病気ですか?

COPDは、タバコの煙などを長年吸い込むことで気管支と肺胞(はいほう:酸素を取り込む小さな袋)が傷み、空気の通り道が狭くなる病気です。息を吸うことより、吐き出すことが難しくなるのが特徴で、吐ききれない空気が肺に残るため、動いたときに息苦しさが出ます。

以前は「肺気腫(はいきしゅ)」「慢性気管支炎」という別々の病名で呼ばれていましたが、現在はまとめてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼びます。肺気腫は、肺胞の壁が壊れて袋が大きくつぶれた状態を指す言葉で、COPDでみられる変化のひとつです。すべての方に同じ程度でみられるわけではありません。検索では「肺気腫」という言葉のほうが広く使われているため、このページでも併記しています。

この病気は数年から十数年かけてゆっくり進みます。ある日突然始まるものではないため、体のほうが少しずつ慣れてしまい、本人が変化に気づきにくいという性質があります。日本では40歳以上の約12人に1人、推定で530万人以上がCOPDの状態にあると考えられています。

タバコが体に与える影響の全体像は喫煙の健康への影響のページで整理しています。

どんな症状が出ますか?初期症状は?

初期は、無症状か、あっても軽い咳と痰だけです。この時期に「病気かもしれない」と思う方はほとんどいません。

進んでくると、次のような形で表に出てきます。

最初に気づかれやすいのは、坂道や階段での息切れです。ただし多くの方は、息が切れる動作を自然と避けるようになります。エスカレーターを使う、ゆっくり歩く、荷物を減らす。こうして日常を調整してしまうと症状が表に出なくなるため、進行に気づく機会がさらに遅れます。

さらに進むと、平地を歩くときや、着替え・入浴といった軽い動作でも息切れが出るようになります。ここまで来てから受診される方が少なくありません。

咳や痰が3週間以上続いている場合は、COPD以外の原因も含めて一度調べる価値があります。長引く咳のページもあわせてご覧ください。

どうしてCOPD(肺気腫)になるのですか?

最大の原因はタバコです。COPDの発症リスクのうち、約9割は喫煙によるものとされています。

ただし、吸っている方が全員なるわけではありません。喫煙者のうちCOPDを発症するのはおよそ15〜20%とされています。この数字は「5人に1人は避けられない」とも読めますし、「8割は大丈夫」とも読めます。問題は、誰が発症する側に入るのかを、事前に見分ける方法がないことです。同じ本数・同じ年数でも、発症する方としない方がいます。

もうひとつ、押さえておいていただきたいことがあります。COPDと診断されるかどうかは、検査の数値がある線を越えたかどうかで決まります。その線に届かなくても、吸っている限り肺は多かれ少なかれ傷んでいきます。 咳や痰が増えた、階段で息が切れるようになったという変化は、診断がつく手前の段階で出ていることがあります。検査で基準に届かなかったとしても、そこが禁煙を考える時期だとお伝えしています。

タバコ以外では、次のものが関係します。

生まれつきの要因としてα1-アンチトリプシン欠損症という病気が知られていますが、日本ではまれです。それ以外の遺伝的な関わりについては、同じように吸っていても発症する方としない方がいることから、何らかの影響があると考えられていますが、はっきり分かっているものはありません。

加熱式タバコについては、紙巻きタバコより有害物質が少ないとされる一方で、長期的にCOPDを起こすかどうかを判断できるだけのデータがまだありません。詳しくは加熱式タバコのページでご説明しています。

見つかっていない人が多いのはなぜですか?

推定530万人以上に対して、実際に医療機関を受診しているのは約38.2万人です。大多数が診断されないまま過ごしていることになります。

2019年に40歳以上の10万人規模を対象に行われた国内の調査では、検査で気流の閉塞が見つかった方のうち、COPDと診断されていたのは8.4%でした。残りの91.6%は、気づかれていませんでした。この傾向は20年以上前の調査からほとんど変わっていません。

見つかりにくい理由は、病気の性質そのものにあります。

一方で、調べること自体は難しくありません。呼吸機能検査は数分で終わり、痛みもありません。40歳以上で喫煙歴があり、咳・痰・息切れのいずれかが気になる方は、一度調べておく価値があります。

どのように診断しますか?

診断の中心は呼吸機能検査(スパイロメトリー)です。筒を口にくわえて、思いきり息を吸ってから一気に吐き出す検査で、数分で終わります。

ここで見るのが「1秒率」です。息を全部吐き出すとき、最初の1秒間でどれだけ吐き出せるかを割合で表したものです。気管支を広げる薬を吸入したあとでも1秒率が70%未満であれば、空気の通り道が狭くなった状態が固定していると判断します。

あわせて次の検査を行い、似た症状を起こす他の病気ではないことを確かめます。

当院ではこれらの検査をすべて院内で行えますので、検査のために別の施設へ行っていただく必要はありません。結果の説明もその日のうちに行います。

喘息と見分けがつきにくいことはありますか?

あります。喘息とCOPDは別の病気ですが、同じ方に両方が重なることがあり、これをACO(喘息COPDオーバーラップ)と呼びます。

見分けが大切なのは、治療の組み立てが変わるからです。COPDでは気管支を広げる吸入薬が中心になりますが、喘息の要素がある方には吸入ステロイドを加えます。

問診に加えて、呼気NO検査やモストグラフで気道の状態を調べると、どちらの性質が強いかを判断する手がかりになります。喘息そのものについては気管支喘息のページでご説明しています。

睡眠時無呼吸が一緒に起こることがあります

COPDの方には、睡眠時無呼吸が併せて起こることがあります。いびきを指摘された、日中の眠気が強い、朝に頭痛があるといった場合は、自宅でできる検査で調べられます。併存している場合、COPDだけの方より増悪や入院が多いという報告があります。

どのように治療しますか?

治療は、薬による治療と、薬以外の治療の両方を組み合わせます。

禁煙が治療の中心です。 薬は症状をやわらげ、増悪を減らしますが、病気の進み方そのものに最も大きく関わるのは禁煙です。すでに症状が出ている段階でも、禁煙によって咳や痰が軽くなり、肺の働きが落ちていく速さが緩やかになります。始めるのに遅すぎることはありません。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来で薬を使った治療を行えます。

吸入薬は薬物療法の中心です。気管支を広げる薬を毎日使い、必要に応じて種類を組み合わせます。吸入器にはいくつもの型があり、力の入れ方や吸い込む速さが違います。薬そのものより「正しく吸えているか」で効果が変わるため、当院では吸入のたびに手技を確認します。うまく吸えていない方は珍しくありません。

感染予防も治療の一部です。COPDは、かぜやインフルエンザをきっかけに急に悪化すること(増悪)があります。インフルエンザ・肺炎球菌・新型コロナウイルスのワクチンで、この引き金を減らします。

体を動かし続けることも大切です。息切れを避けて動かなくなると、筋力が落ちてさらに息切れしやすくなるという悪循環に入ります。無理のない範囲で日常の活動量を保つことが、息切れの進行を抑えます。

病気が進んで血液中の酸素が足りなくなった場合には、在宅酸素療法という治療があります。呼吸リハビリテーションについては当院では実施していないため、必要な場合は連携する医療機関にご紹介します。

この先どうなりますか?

一度壊れた肺胞は元に戻りません。その意味でCOPDは治りきる病気ではありません。ただし、進み方の速さは変えられます。ここが治療の目標になります。

見通しを左右するのは、主に次の2つです。

ひとつは禁煙です。吸い続けた場合と禁煙した場合とで、肺の働きが落ちていく速さは変わります。早い段階で禁煙できた方ほど、日常生活に支障が出る時期を先に延ばせます。

もうひとつは増悪を減らすことです。増悪を繰り返すと、そのたびに肺の働きが一段ずつ下がり、元の水準まで戻りきらないことがあります。ワクチン、吸入薬の継続、かぜをひいたときの早めの受診は、いずれもこの増悪を減らすための手段です。

国内では、COPDによる死亡率を人口10万人あたり13.3人から2032年までに10.0人へ減らすという目標が掲げられ、その柱として発症予防・早期発見・重症化予防が挙げられています。裏を返せば、早く見つけて禁煙と増悪予防に取り組めるかどうかで、経過は変わりうるということです。

経過には個人差があり、発見された時点の重症度、併存する病気、禁煙できるかどうかで大きく変わります。数字だけで見通しが決まるものではありませんので、ご自身の状態については診察の場でご説明します。

当院での診療

当院の内科外来は、日本呼吸器学会 呼吸器専門医が担当します。

タバコを吸っていて咳や痰が気になってきた方、坂道や階段で息が切れるようになった方は、一度ご相談ください。Web予約から受け付けています。

参考

呼吸器専門医監修 咳の相談室(咳のFAQ) 「この咳、受診したほうがいい?」「抗生物質は必要?」——咳のギモンにお答えします。随時更新中。 FAQをチェックする →

よくある質問

COPDと肺気腫は同じ病気ですか?

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主にたばこの煙などによって空気の通り道が狭くなる病気です。以前は「肺気腫」「慢性気管支炎」という病名が使われていました。肺気腫はCOPDでみられる肺の変化のひとつですが、すべての方にみられるわけではありません。

COPDの初期症状はどんなものですか?

初期は無症状か、軽い咳・痰程度です。進行すると階段や坂道での息切れが現れ、これをきっかけに見つかることが多くあります。

COPDはどうやって診断しますか?

症状や喫煙歴を確認したうえで、息を吐く力を測る呼吸機能検査(スパイロメトリー)を行います。気管支を広げる薬を吸入したあとも、最初の1秒間に吐き出せる空気の割合(1秒率)が70%未満であることを確かめ、似た症状を起こすほかの病気でないことも確認して診断します。

禁煙すればCOPDは良くなりますか?

禁煙はCOPD治療の中心で、症状をやわらげ、進行を遅らせることが期待できます。効果の出方には個人差がありますが、禁煙を始めるのに遅すぎることはありません。必要に応じて吸入薬による治療やワクチンによる感染予防を組み合わせます。

タバコを吸わなくてもCOPDになりますか?

なることがあります。ただしCOPDの患者さんの多くには喫煙歴があり、日本では原因の第一はタバコです。ほかに大気汚染、職場で粉じん・蒸気・煙・化学物質を吸い込むこと、まれに遺伝的要因も関係します。

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